Shion Tabata: 野村美術館に学ぶ

Overview
素晴らしい作品に出会う度、見たもの聞いたことを心おぼえに手控えとしてメモに残すという習慣はかれこれ 30 年以上続いており、いつしか私にとってライフワークとなっていました。

作品そのものだけでなく 箱書きや仕覆 添状など 付属の品々をも拝見すると その作品がいかに愛されてきたのかということを感じることができます。
携わってきた人びとの想いを纏って長い年月今日まで歩んできた作品を、私は毎回ワクワクしながら紙に描き写してきました。
三次元の作品を二次元の紙に書き写し、その覚え書きから私のフィルターを通してまた三次元の作品に立ち上げる。
そうした作業により出来上がった作品群を“ 写し”として発表させていただきます。
写しというと 如何にオリジナルの作品に近づけるかということが大事なようにも思います。
しかし私の場合は、元物を拝見したときの自分の感情も含めて作品に落とし込んでいる分量が多いように思います。
私が体験したひとつひとつの作品との出会いを、作品を通じてご覧になる方々にも追体験いただければ嬉しいです。

 

田端 志音

 


 


志音さんとめぐり逢ってもう30 年になる。
若き日、大阪の美術商・谷松屋戸田商店に勤め、見るモノ、触れるモノ、会う人、話す人、そのすべての最上級なモノと人のエッセンスを得て学び 人間を形成し 陶芸家になった。
彼女の真面目さと輝くような感性は、江戸中期の乾山や仁清を写し 伊賀を目指した。
2004 年、軽井沢に移り穴窯を築き 作陶に励む彼女の作品は 茶人や有名料理店の目に留まり、今では京都・野村美術館で個展を隔年開いている。
野村美術館所蔵の作品を長年描き貯めていた「志音手控え帳」特装本を2022 年11月に出版。
同時開催の個展では、その手控え帳に描かれたやきものを彼女が制作、一緒に展示して話題を呼んだ。
今回、銀座一穂堂ではその凱旋展のような個展となる。誰も見たことのない展覧会、本当に楽しみである。

Installation Views