Jihei Murase

Overview
水の器

世界中のファッションやアート拠点である New York 〜 London。
どの国々でも木と漆の パワーが伝わることにいつも驚き、木=自然に対する憧れと尊敬の気持ちを伝えてくれました。
現地では美術館巡りに時間を費やしますが、ヨーロッパの伝統的なデザインには、 身体全体で影響を受けます。
また、古代文明から「壺」がかなりの展覧数を占めていて「水」が命の根源であり精神性を 感じました。
水指と言ってしまうと茶道具になりますが「壺」として考えると可能性が 広がるのではないか?
自身の欅の作品が 1000 年後も水を湛える美しい壺として残って いたら......と想像しました。
毎日 力強い木の生命力を相手に轆轤にむかい 木を削り彫刻 漆を塗る。これからも木と漆のもつ潜在能力や可能性を信じ伝えていきたいと考えています。


村瀬 治兵衛

 


 

 

寒かった冬が去り 木々が芽吹き出すこの季節に 銀座一穂堂で三代目村瀬治兵衛展を 催すことになった。
若き日、彫刻家を目指した彼は 今でも創作に向かう時はデッサンから始める。
木が好きで 木の香りに囲まれたアトリエは 秀逸の木地師としての技を持つ彼らしく機械も道具も木材も 整然と片付いていて美しい。
片隅で鍛冶屋のように、鑿(のみ)や鉋(かんな)などの道具までも造る。
初代・二代・三代と村瀬治兵衛を受け継ぐ中で 魯山人、小山富士夫、松永耳庵、 林屋晴三らの文化人と関わり 学び 研鑽して 今に至っている。
村瀬の作品は清潔で優しくて品格がある。その作品はフィラデルフィア美術館、メトロポリタン美術館、ヴィクトリア & アルバート博物館など 一穂堂の海外進出と共に挑戦し 互いに助け合い 前に進む 同志のような存在でもある。
今回はお嬢さん・礼さんの椀も並ぶ。
銀座一穂堂の 3 階サロンと地下・具庵は、彫刻家として 木地師としての 木の香る村瀬治兵衛の世界になる。