Ken Matsubara

Overview

無性に龍を描きたくなる時がある

 

「……近頃、 良い龍が無いな」

呟きを聞かれてしまった

 

『なら、龍描きましょ「龍展」やりましょ!』

名人に私の最も古い引き出しを、又 開けられてしまった

 

となれば親愛なる龍たちを訪ねて

日光を皮切りに京都、奈良、四国、九州、山口、 岡山、 岐阜…と

龍行脚の旅

 

子供の頃にに戻り、夢想は広がり、組んず解れつ

久しぶりに龍との戯れを愉しみました

 

松原 賢

 


 

井上三綱を師として画家の道を歩んで来た松原賢。

具象と抽象の混ざった絵を描き 特に音をイメージした立体的な表現は長く彼のオリジナルの絵となった。

 

2022年、Ippodo New Yorkの展覧会で発表した代表作と言える12曲屏風「二河白道・カオス」がミネアポリス美術館に収蔵された。

同美術館は日本美術コレクションではアメリカ屈指を誇り、2023年9月には美術館特別展として「二河白道屏風」だけの「Chaos」展を企画、松原賢は画家として世界に認められた。

 

その彼は子供の頃 山道を一人で歩いて 大岩山の石仏不動明王に度々会いに通ったと言う。

石仏が少年・ケン坊の親友だったと紹介された時、松原賢の絵の宗教的な表現や 深い感受性と奥行きの深さを理解したように思えた。

 

松原賢は長く抽象画を描いていたが、林屋晴三氏に富士山を求められてから具象も描くようになった。

具象の富士山 松 藤も また美しく深いのである。

 

令和6年の干支が辰という事で、2年前「龍を描いて欲しい」と お願いした。

少年・ケン坊が白い紙があれば 龍ばかり描いていた事は知らなかった。

 

龍は古くは中国から伝わり 日本神話 仏教 民話にも出てくる想像上の動物で 様々な伝説が 残されている。

水中に住み 天空を自由に飛ぶ龍は 人間の憧れであり、雷 稲妻の光と共に現れ大雨を降らす事から 雨乞い信仰にも繋がっている。

 

冬の称名滝で龍を見たと言う松原賢。

一穂堂のこの企画が決まってから 寺の龍の絵や彫刻を求めて日本中を旅した彼が描いた龍、見事な松原賢の龍が銀座に現れる。

そして 近い未来 彼の描く龍が有名な寺の法堂の天井を舞う時が必ず来る。

きっと来る。きっと来る。

 

◇井上三綱(1899〜1981)…画家。西洋と東洋の融合画風はイサムノグチ、ロバート・オッペンハイマー、ベン・シャーンなどにその実力を認められた。

Installation Views