前田宏智 金と銀の器: 〜ボンボニエールに想いを馳せて〜

概要
  • 当展示はアポイント制です。

  電話かメールにて事前予約をお願いいたします。
  03-5159-0599 / tokyo@ippodogallery.com
 (開廊時間:11時〜18時 休廊日:月曜日)

・全日午後 作家在廊予定

 


 

 もう令和4年となりましたが、令和天皇即位の礼、大嘗祭に飾られた銀製の調度品「洲濱」(すはま)と「挿頭」(かざし)を制作させていただきました。日本の文化の歴史的に連なる工芸品のひとつに携わることで身が引き締まる思いがしましたが、その折に一穂堂で青野さんと皇室にまつわる工芸などの話題でひとしきり盛り上がったように記憶しています。ここから、ボンボニエールへの気持が引き出されました。

 私は金工作家として、模様を嵌め込み描く象嵌や金鎚で打ち絞り器形を作る技法などを新しく組み立てて、自身の中の感性を抽出し、素材の声に耳を傾けながらも自分の技倆で手の中から作品を作り出すことを大切にして制作を進めています。同じ手法でボンボニエールの印象を金と銀の器として想い描きました。

 私の想いが作品に醸し出されているでしょうか。皆様に何かを感じていただけますように願っております。


令和四年六月

前田 宏智

 


 


上野の森、東京藝大の前田宏智研究室に通うようになったのは 浄土真宗宗祖 親鸞聖人の舎利容器制作をお願いした事から始まった。
研究室は 一昔前の道具箱のようで 金鎚 当金 鏨 など 彫金・鍛金制作に用いる道具が 壁の棚一面に整然とならび 種々の金属材料や参考となる鉱石、工芸品、美術品などのコレクションで溢れている。彼が集めた好みのモノ達に囲まれて 彼の感性や創作意欲は楽しそうで、 日本古来の伝統の技を守りつつも 金属の新しい表現や造形に挑んでいる。

明治9年、廃刀令が発布され、刀に付随していた刀装具が廃れ 時代と共に多様な金属工芸の作り手も少なくなり その存在さえも忘れ去られている。そんな現代社会に 前田宏智の挑戦は数々の賞を得て、金工の未来の扉を開けるように 新しく輝いている。

先般 令和天皇 大嘗祭の折の祭器も、今回お願いした親鸞聖人の舎利容器も これから先 何百年 それ以上の歴史の中の宝物として 未来に残っていくに違いない。

この度 一穂堂の個展に幸福な小箱 金銀のボンボニエールを作っていただくことになった。ボンボニエール(bonbonnière)は皇室のお祝い事に贈られる砂糖菓子を入れる小さな器。前田宏智は あの道具箱のような研究室で優雅な表情のボンボニエールを作った。

小さな箱に 愛と希望をいっぱい詰め込んで……。

展示風景