海田曲巷: 巷の茶杓
僕は今年 喜寿 七十七歳になる。昔ならおじいさんである。
年をとったから遊ばなくなるのではなく、遊ばなくなったから年をとるのである。
皆んなで遊ぼうではないか。
茶の湯の文化では 愛でる道具に 茶入、茶盌、花入、 そして茶杓に名前をつける。
外国でスプーンに銘をつけるという話はきいたことがない。
1本の竹ベラが その日のオーケストラのコンダクターの指揮棒の役を演じる。
銀座一穂堂の劇場での音楽会を聴きに来てください。
当日の茶杓の銘は「千古の風」です。
10月7日、10月8日は この爺が釜をかけます。
曲巷 拝
巷の茶杓
いつの間にか お互いに年老いたようにも思えますが、初めて会った時、 曲巷 という名前の意味を聞きました。
海田先生は 学校の教師が生徒に教えるように 「巷 ―― 社会で 色々な事をするんだよ。遊ぶことも 学ぶことも……」と。
私には 巷 と言う言葉が大人っぽくて 別世界のように感じたものでした。
確かに 海田先生は 巷で学んだ引き出しがいっぱいあって 1本の竹片を見ては さまざまな表情を感じて 美しい茶杓に作り上げ 知的な銘やユーモラスな ネーミングを覆わせます。
時に漢詩、時に西洋のポエムまで飛び出してきます。
その上にみごとな古裂の仕服です。
海田先生の巷は 貴い 深い 茶の湯の世界だったのでしょう!
最近 白いお髭の熊谷守一のようで もうおじいさんですよ。
久しぶりの個展、楽しみにしています。