Home

  • 松原賢「カオス」ミネアポリス美術館に収蔵されました

    松原賢「カオス」ミネアポリス美術館に収蔵されました

    2022年3月にIppodo New Yorkにて展示した松原賢「カオス」が、アメリカのミネアポリス美術館のコレクションになりました。

    「カオス」は39年前に描かれた大作。時を経て、6曲1双の屏風に仕立てられ、ニューヨークでお披露目となりました。

     

     


     

     二河白道をこんなふうにぶつけてきたのかと驚いた。参った。初めて見たときは数分佇んで、ぐらぐらっとした。画家の内奥で煉獄の炎と水流の波濤とがぶつかり、そこに一条の白道がどのようにあらわれてくるか、その「あらわれ」を求めて描いたのだろうと想うのだが、その凄まじい力は画家の意図をこえて見る者に伝播してくるのである。驚いた、参った、脱帽した。
     中国浄土教のマイスター善導が浄土信仰の心を二河白道をメタファーとして説いてこのかた、多くの二河白道図が仏画として提供されてきた。善導は「穢土としての此岸」(here)と「浄土としての彼岸」(there)のあいだに白い道があること、そこを渡っていきなさいと説いたのだが、多くの仏画はその道程の光景をスタティックな構図にしてきた。私も十数点の作例を見てきたが、だいたいは同じ印象だった。
     そこを松原賢が「魂の葛藤」を通して大胆な二河白道をあらわした。抽象と具象が互いに干渉しあい、構想と描法が溶け合い、阿弥陀と観音・勢至が円環をなし、衆生が混沌からの脱出をめざしている。それらがまさに「いま、そこに」おこっているかのようなのである。
     ヴィジョンとは、このようにあらわれるべきものだろう。そうでありたいと思わせた。本作は仏画としても、現代絵画としても、どんなところに飾られていても、見る者を「ここ」(here)から「むこう」(there)に運んでいくだろう。

    松岡正剛
    編集工学研究所所長
    角川武蔵野ミュージアム館長